
「近くを見ると目が疲れます。遠く用と近く用を掛け替えているので、できれば1本のメガネで使えるようにしたい」という50代の女性のお客様です。眼科でプリズム処方を受け、以前はベースインプリズムを入れた遠近両用メガネを使用されていました。
しかし、遠近両用レンズにはなかなか慣れることができず、その後は遠用メガネと近用メガネを別々に作製して使用されていました。どちらのメガネにも左右それぞれ3Δのプリズムが入っています。今回は「特に近くを見ると疲れるのでプリズム量を増やしたい」「できれば掛け替えずに1本で使いたい」というご相談でした。
測定すると眼位は、「遠方:8Δ 外斜位 近方:20Δ 外斜位」と、遠方と比較して近方で大きな外斜位が確認されました。近くを見るときの負担が大きく、「近方を見ると疲れる」というご相談とも関連している可能性が考えられました。
今回は、遠方と近方で眼位に大きな違いがあるため、それぞれの距離での見え方とプリズム量を分けて確認しました。
今回のポイントは、遠方と近方で外斜位量に大きな差があったことでした。遠方では8Δの外斜位でしたが、近方では20Δの外斜位が確認されました。お客様からは近方での疲れを軽減するため、現在の左右それぞれ3Δから、左右それぞれ4Δへプリズム量を増やしたいというご希望がありました。
しかし、近方だけを基準にプリズム量を増やすと、遠方ではプリズムが違和感を増やす可能性も考える必要があります。そのため、近方での見やすさだけでなく、遠方を見たときの状態も確認しながらプリズム量を検討しました。
また、近方については40cm程度をより見やすくしたいというご希望があったため、加入度数についても確認。これまでの+1.25Dから+1.75Dへ変更することで、希望されていた40cm付近の見え方を確保することにしました。
以前使用した遠近両用レンズには慣れることができなかった一方で、「遠用と近用をできるだけ1本にまとめたい」というご希望がありました。
そこで今回は、遠方部分と近方部分が明確に分かれている二重焦点(バイフォーカル)レンズをご提案。累進レンズのように遠方から近方まで連続的に度数が変化するのではなく、遠方と近方を明確に使い分けられることを重視しました。
また、
したうえで作製しました。
お渡し時には遠方・近方ともに良好な見え方が確認でき、装用感にも大きな問題はありませんでした。

その後、約3か月ご使用いただいてから、実際の使い方について改めて確認しました。
すると、近くを見る際に以前からの癖で、メガネを少し下にずらし、目からレンズを離して見ることが分かりました。
また、当初想定していた40cmよりも、さらに遠い距離で見たいというご希望もありました。台所の作業距離であったため、50cm~60cmぐらい。プラスレンズは目からレンズまでの距離を離すことで、目に対する実効的なプラス効果が強くなる方向に変化します。そのため、お客様が無意識にメガネを下げて見ていたことも、近くのピントの合う距離に変化がありました。
さらに、実際に3か月使用した結果、プリズムについても「遠方視時、少し多く感じるため、以前の量に戻したい」というご希望がありました。
そこで再度、
を確認し、プリズムは左右それぞれ3Δへ戻す方向で再調整することにしました。
メガネの度数を決めるときには、測定時に「よく見える」ことだけでなく、実際の生活の中でどのようにメガネを使っているのかを確認することも大切です。今回のお客様は近方で大きな外斜位があり、近くを見る際の疲れを感じていました。
一方で、近方に合わせてプリズム量を増やせばよいとは限りません。遠方と近方で眼位が大きく異なる場合には、遠方でプリズムが過剰にならないかも確認する必要があります。
また、近方を見る距離についても、測定時には40cmを希望されていても、実際の生活ではそれより遠くを見ることがあります。
今回のように、メガネを少し下げて少し遠くを見るという普段の何気ない使い方から、実際に必要としている見え方が分かることもあります。
天竜堂では、お渡し時の見え方だけで終わりではなく、実際にメガネを使用していただいた後の状態も確認しながら、必要に応じて度数やフィッティングなどを見直しています。特にプリズムメガネでは、数値だけで判断せず、遠方・近方それぞれの見え方や装用感を確認することを大切にしています。
なお、斜視や複視などについては眼科での診察が必要になる場合があります。今回のお客様も眼科でプリズム処方を受けたうえで、その内容を踏まえてメガネを作製しています。