天竜堂

2025.09.24

「視距離」=「見る距離」について その4 職種別の視距離に適したメガネレンズの選び方

「見えにくい」「目が疲れる」「ピントが合わない」…。こうした悩みの原因が“視力の低下”だと思って眼鏡を作ってみたものの、いざ使ってみると「なんだかしっくりこない」「長時間かけていられない」ってことないですか?

それはもしかすると、見る距離に合っていないレンズ設計が原因かもしれません。視力矯正は「度数」だけではありません。“どの距離を見るためのレンズか”という設計の違いが、快適な視生活を大きく左右します。本コラムでは、職種別に「見る距離(視距離)」の傾向を分析し、それに合った眼鏡レンズの選び方をわかりやすく解説します。

距離別レンズの基本的な考え方

眼鏡レンズは、見る距離に応じて大きく分けて以下のようなタイプに分類されます。視距離別に合ったレンズを選ぶ際にまず、知っておいてください。

距離別レンズの基本的な考え方

職種別の視距離と求められる視機能

職種によって使用頻度の高い視距離が異なります。以下に職種別に使用頻度の高い視距離をまとめましたので、レンズ選びの参考にしてください。

職種別の視距離と求められる視機能

各職種におすすめのレンズタイプ

接客・販売職におすすめのレンズタイプ
接客・販売職におすすめのレンズタイプは、遠近両用または中近両用のレンズです。接客中は1~2m前後の「パーソナルスペース」の視認性が重要になります。しかし、商品チェックなどの業務では手元~50cmの距離も使うため、上下の視野切替えに優れる遠近両用レンズが効果的です。

事務・デスクワーカーにおすすめのレンズタイプ
事務・デスクワーカーにおすすめのレンズタイプは、中近両用(オフィスレンズ)や近用ワイドレンズです。事務作業などを行うデスクワーカーの場合、長時間のPC作業では、調節負担が少ない中間視力がポイントになります。しかし、書類やメモも見るなら「横の広さ」も確保できる中近両用が便利なレンズになります。

教育・研修職におすすめのレンズタイプ
教育・研修職におすすめのレンズタイプは中間視野重視設計の遠近両用レンズです。学校の先生や塾の講師など、授業時間中は黒板やスクリーンと手元資料の視線移動が頻繁に行われます。そのため、中間距離~遠方をスムーズに切り替えられる遠近両用レンズが適しています。

技術・製造職におすすめのレンズタイプ
技術・製造職におすすめのレンズタイプは単焦点近用レンズまたは近用ワイドレンズです。手元作業に集中するなら、焦点がぶれない単焦点が最適です。でも、工具や部品全体を見るような職種なら、横に広い視野が確保できる近用ワイドレンズがおすすめです。

ドライバー・警備職におすすめのレンズタイプ
ドライバー・警備職におすすめのレンズタイプは遠近両用レンズまたは単焦点遠用レンズです。ドライバーは、運転時安全第一なので、まず遠くがはっきり見えることが重要です。ドライバーだけではなく警備業でも昼間のまぶしいときは偏光レンズで光の反射をカットするレンズ使用も有効となります。また、昼夜の切り替えがある人には、紫外線量でレンズカラーが変わる調光レンズの使用も有効的です。

美容師におすすめのレンズタイプ
美容師におすすめのレンズタイプは中近両用レンズまたは近用ワイドレンズです。カット・カラーなどの手元作業では近距離の快適さが必須です。お客様とコミュニケーションをとったり、カットのバランスを見る際のお客様の顔を見たりする動作による中間距離との切り替えが多いため、“視線移動がスムーズな中近レンズ”が特に効果的です。また、鏡越しに見る動作もあるため、広めの視野設計が望ましいです。

看護師におすすめのレンズタイプ
看護師におすすめのレンズタイプは中近両用レンズまたは調節力補助重視の境目なし遠近レンズです。点滴準備や記録入力などは近距離、バイタルチェックや声掛けでは中間距離となります。看護師のお仕事は状況変化への対応が多く、視線の切替え頻度が高いため、中間視野が広くピント移動のストレスが少ないレンズ設計が理想です。また、夜勤・明暗差への対応が必要な場合は、遮光機能も検討するといいでしょう。

レンズ選びでよくある失敗とその対策

レンズ選びでよくある失敗とその対策についてまとめてみました。

レンズ選びでよくある失敗とその対策

自分に合った「距離と視野」を手に入れるために

自分に合った距離と視野を手に入れるためには、メガネ店でメガネを作る際に「どんな距離」を「どんな時間」「どれくらい見るか」をしっかり伝えることが重要です。その際、レンズだけではなく、フレーム選びも重要になります。特に多焦点では視野に影響が出るため、自身のレンズに合ったフレームを選びましょう。

メガネ店スタッフの立場でお話しさせていただくと、実際の仕事環境をスマホで撮っておくと相談に乗りやすいです。また、1つのフレーム&レンズでなんとかしようと考えるだけではなく、複数のメガネを使い分けるという選択肢も視野に入れた方がより自分に合った距離と視野を手に入れることができると思います。

浜松市と磐田市のメガネ店天竜堂では、お客様お一人おひとりに合わせた見方や見え方をご提案するために、まずはじっくりご要望をお伺いします。そのうえで今お使いの裸眼やメガネでの見え方(視力など)や見方(見る距離など)を確認し、眼の特徴を理解するために測定を行います。そうすることで快適な見え方や見方に繋がります。

まとめ

「よく見えるレンズ」を選ぶことも大切ですし、「自分の生活に合っているレンズ」を選ぶことは、目の健康にも仕事のパフォーマンス向上にもつながります。特に40代以降は調節力の変化が出やすく、レンズ選びの失敗が目の疲れや姿勢の崩れに直結します。

メガネは“度数”だけでなく“見る距離=視距離”も合わせて選ぶべきツール。ぜひ今一度、ご自身の「見る距離」とライフスタイルを見直してみてはいかがでしょうか?

この記事はわたしが書きました

齋田祐一(さいたゆういち)

有限会社天竜堂 1級眼鏡作製技能士(旧SSS級認定眼鏡士)

キクチ眼鏡専門学校卒業後、眼鏡の組合で教育事業に関わり、眼鏡店、眼科を経験後有限会社天竜堂へ入社。眼鏡の仕事を多方面から関わることでお客様のお役に立てる商品やサービスの提案に日々邁進しております。

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